営業成績を上げるには具体的な目標設定が重要
営業活動を効率化するため、インサイドセールスを取り入れている企業が増加傾向にあります。効果の高いインサイドセールスですが、具体的な目標を設定して成果を評価していかなければ、本当に効果があるのかどうか判断できません。
具体的な数値目標であるKPIを設定することで、インサイドセールスの成果を正しく評価し、何をどう改善すれば良いのかという明確な改善アクションを考えやすくなります。
そこで本記事では、インサイドセールスで設定するKPIの種類や具体的な改善ポイントについて解説します。
まずはインサイドセールスをおさらいしよう
インサイドセールスとは「inside=内側」「sales=営業」という意味から、電話やメールなどのツールを用いた内勤営業を指します。
もともとインサイドセールスは1950年代にアメリカで生まれたとされています。アメリカは国土が広いためすべての顧客への訪問営業が難しいという背景から、効率的に営業活動を進めるためにインサイドセールスが登場しました。
ITが進歩した現代では、インサイドセールスは電話やメールだけでなく、オンライン商談システム(ビデオ会議ツール)を活用する例が増えています。オンライン商談システムにより、相手の顔を見て話したり資料を共有したりできるようになり、より対面での商談と同じレベルの営業活動に近づいています。
またインサイドセールスがアポイント獲得から受注まですべて非対面で行う場合もありますが、リードとの関係性を構築してアポイントを獲得してフィールドセールス(訪問営業)にトスアップする組織もあります。日本では後者のケースが一般的です。
KPIとは?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
企業は、最終的なゴールを達成するために戦略を立案し実行します。この最終的なゴールを「KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標」と言い、売上目標を設定する場合が多く見られます。
KGIを達成するためには、ゴールにたどり着くまでのプロセスごとに成果を評価し、KGIへの達成度を見極めながらプロセスを設計していかなければいけません。このKGI達成までのプロセスにおける評価指標をKPIと言います。そのため、KPIはしばしば「中間目標」とも言われます。
たとえば「売上高を前年比2倍にする」という最終目標を立てた場合、その目標を達成するためには新規獲得件数を増やしたり既存顧客の単価を上げたりする必要があります。そこでKPIを「一カ月の新規獲得件数〇件」「顧客単価〇円」などに設定して定期的に評価することで、最終的な目標達成に近づけるのです。
インサイドセールスで設定できるKPIの種類
インサイドセールスは「営業効率化」「分業化」などの意味合いが導入されるケースが多いですが、正確に評価しなければ本当に成果につながっているのは判断できかねます。
適切なKPIを設定して結果を評価していき、達成状況を測定していく必要があります。
インサイドセールスでは、以下の指標をKPIとして設定可能です。
- 営業回数や通話時間
- 営業メールの開封率
- 商談化した案件数
- 受注数や受注率
- 受注できた金額
それでは、一つずつ見ていきましょう。
営業回数や通話時間
営業回数は「架電回数」とも言い換えられます。インサイドセールスでは行動量を評価するために、営業回数(架電回数)がKPIとして用いられます。
また「ダラダラと説明していないか」「トークスクリプト通りに話せているか」などを評価する目的で、通話時間をKPIとして設定する場合もあります。
これらの数値を測定するために、電話システム(CTI)を導入している企業も増加傾向です。システムの導入により自動で架電回数や通話時間が測定されます。
またAI搭載のツールでは、通話内容が自動で文字起こしされる機能もあります。文字起こしで、成果につながる営業トークを分析できます。
このように営業回数と通話時間を効果測定することで、どのくらいの活動量であれば成果を出せるのかを把握します。また分析結果から、営業リストのブラッシュアップやトークスクリプトの改善なども可能です。
営業メールの開封率
インサイドセールスでは、顧客とのコミュニケーションのためにメールを活用するケースが多いです。メールマーケティングにはメルマガやステップメール、フォローメールやパーソナライズドメールなどさまざまな種類があり、どれも顧客との関係構築に使われます。
ただしメールマーケティングの大きなデメリットとして、開封率の低さが挙げられます。タイトルを見て開封しないケースが多いため、読まれるメールを作成するために効果測定が必須です。
開封率の検証により、開封率が高いのはどのようなタイトル(件名)なのかを分析できます。また曜日や時間帯も開封率に影響するので、さまざまな視点から開封率を分析しましょう。
商談化した案件数
インサイドセールスによって商談化数は重要な評価指標となります。
組織によってインサイドセールスの役割は異なりますが、インサイドセールスが商談を創出してフィールドセールスに引き継ぐケースが一般的です。そのため商談をどれだけ創出できたかが、インサイドセールスにとって大きなポイントとなります。
このとき注意しなければいけないのは、アポイント獲得数と商談化件数は異なる点です。
インサイドセールスがアポイントを獲得できても、リードの購買意欲が低く訪問前にキャンセルする場合もあり、実際には商談が行われていないアポイントもあります。一方、実際に商談が行われればリードの購買意欲が高いと判断できるので、商談化した案件数をKPIとして設定すべきと言えます。
受注数や受注率
インサイドセールスは受注に関わる機会が少ないため、フィールドセールスほど受注に責任を感じていない傾向にあります。しかしそれでは「とりあえず商談化すれば良い」という考えになってつぃまい、質の低い商談ばかりが創出されかねません。
フィールドセールスに引き継いだリードや商談の質を検証するためにも、インサイドセールスにも受注数や受注率をKPIとして設定し、受注に責任を持たせるべきです。
またインサイドセールスが、受注まで担当したり既存顧客のアップセル・クロスセルを担当したりする組織もあります。そのようなケースでも、受注数や受注率は必須のKPI指標となります。
受注できた金額
受注数とともに受注金額もKPIとして有効です。なぜならインサイドセールスがリードにうまく働きかけて購買意欲を高めることができれば、自然と商談の質が高くなり受注金額も高額になるためです。
受注金額が高くなれば、それだけインサイドセールスが引き継ぐ商談の質が高いと判断できます。
ただし受注金額や受注件数などは、フィールドセールスのスキルや商談内容によっても左右されます。インサイドセールスが関与しきれない部分もあるので、顧客規模によって割合を変えるなど対策を取りましょう。
インサイドセールスでKPIを改善させるポイント
KPIを設定して運用していくうち、効果測定をしてみると「KPIの数値が思わしくない」「なかなか数値が伸びない」などの課題に直面することも珍しくありません。インサイドセールスでKPIの数値を改善するポイントとしては、以下の4つが挙げられます。
- 顧客との接点を増やす
- 顧客との関係性を深める
- ツールを用いて定期的に効果測定する
- 提案する商材を見直す
それぞれKPI改善には欠かせないポイントなので、一つずつ解説します。
顧客との接点を増やす
そもそも顧客との接点が少なすぎると、KPIの数値も低いまま推移してしまいます。
架電数をKPIとしている場合を例に考えてみましょう。
架電数が少ないということは「そもそも架電していない」もしくは「電話をかけても担当者につながっていない」という2つの原因が考えられます。前者の場合、架電に充てる時間を増やしたり業務フローを見直したりする必要があるでしょう。そして後者の場合は、始業すぐの時間やお昼休憩の時間など担当者につながりにくい時間帯に電話をかけている可能性があります。
また、そもそもの接点が少なければ、当然のことながら商談化数や受注件数も少なくなります。ほかのKPIにも影響してしまうため、早急な改善が必要と言えるでしょう。
このように接点が少なくなっている原因を見極めることで、どうすれば接点を増やせるのか対策を練ることができます。
顧客との関係性を深める
受注件数や受注金額といったKPIが低い場合、顧客との関係性が充分に構築できていない可能性が高いです。
インサイドセールスが顧客と適切に関係性を深めて購買意欲を高めてからフィールドセールスに引き継げば、必然的に受注件数や受注金額にも影響します。しかし関係性構築が不十分だと購買意欲が低い顧客を引き継いでしまい、商談の質が低下して失注してしまうでしょう。
顧客との関係性構築には、メルマガ配信やホワイトペーパー配布などが効果的です。
また電話やオンライン商談システムを使い、顧客と直接話して現状や課題のヒアリングもおすすめします。実際に声を聞いて話すことで、文面だけよりも相手の温度感が伝わり信頼関係を構築しやすくなります。
ツールを用いて定期的に効果測定する
インサイドセールスの成果を評価して改善していくためには、定期的に効果測定をして成果を検証する必要があります。
1カ月ごと・3カ月ごと・半年ごとなど定期的に数値を振り返って比較し、傾向をつかみましょう。定期的に振り返ることで、数値が伸びない原因を追究して改善につなげます。
効果測定にはツールの活用がおすすめです。ツールを活用すれば自動で集計や分析でき、効果測定にかけるリソースを削減したり手計算によるミスを防いだりする効果が期待できます。
インサイドセールスにおすすめのツールは、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)、MA(マーケティングオートメーション)やCTI(電話システム)などがあります。自社のインサイドセールスの業務内容や検証したい数値に合わせて、導入するツールを選びましょう。
提案する商材を見直す
KPIが伸びないのには、インサイドセールスが提案する商材がミスマッチだという原因が隠れていることもあります。インサイドセールスは効果の高いものですが、商材によってはインサイドセールスが向いていない場合もあるのです。
たとえばBtoB商材や高額商材は検討期間が長くなりやすく、顧客と関係性を構築しながら購買意欲を高めていかなければいけません。しかし電話やオンライン商談のみでは関係性醸成が不十分で、なかなか受注につながらないのです。
またインサイドセールスでは、顧客が商材の実物を手に取って確かめることが困難です。「実物を見てから購入を決めたい」という顧客も一定数いるため、インサイドセールスだけでクロージングまで担当するには限界があるでしょう。
インサイドセールスが扱う商材を見直したり、フィールドセールスへ引き渡すよう分業制にしたりするなどの対策が求められます。
適切なKPIを設定してインサイドセールスの効果を高めよう
インサイドセールスの成果を評価するには、KPIの設定が不可欠です。自社のインサイドセールスの役割や目的に合わせて、最適なKPIを設定しましょう。
KPIの設定には、具体的な数値を用いるのがおすすめです。定性的なKPIだと評価しにくいため、定量的に判断できるKPIを設定しましょう。
またKPIは設定するだけでなく、定期的に数値を検証して効果を評価する作業も忘れないでください。定期的に振り返り原因を追究することで、数値を改善してインサイドセールスの成果を最大化できるでしょう。