採用難や働き方の多様化が進む中、人事部門には業務効率化だけでなく、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化する「戦略人事」への転換が求められています。
膨大な業務と複雑な人の課題に向き合うため、多くの企業がAI(人工知能)を活用した人事変革(HRテック)に取り組み始めました。
本記事では、採用から配置、育成まで、AIを活用して成果を上げた人事の成功事例5選と、導入のメリットや注意点についてわかりやすく解説します。
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人事領域におけるAI活用は業務効率化と公正な人事判断の両立が鍵
人事領域(HR)におけるAI活用とは、採用、評価、配置、育成といった人事業務にデータ分析や機械学習を取り入れ、意思決定の精度とスピードを高める取り組みのことです。
「HRテック(HR Tech)」の中核技術としても注目されており、エントリーシートの自動判定や、従業員の適性に応じた異動先の提案などが実用化されています。
従来、人事業務は担当者の「経験」や「勘」に依存する部分が大きく、評価のバラつきや業務の属人化が課題でした。
しかしAIを活用すると、客観的なデータに基づいた公平な判断ができ、膨大な定型業務を自動化・効率化が可能です。
これにより、人事担当者は「従業員との対話」や「組織戦略の立案」といった、人間にしかできないコア業務に注力できるようになるでしょう。
人事業務におけるAI活用事例5選|採用から配置までを改革
ここからは、実際にAIを導入して人事業務を変革した企業の事例を5つ紹介します。
- ソフトバンク|AIによるES選考で採用時間を75%削減
- 三井住友海上火災保険|AIが異動案を作成し適材適所を加速
- 日立製作所|幸福度を計測し組織のパフォーマンスを向上
- 日本IBM|退職予兆をAIで検知し優秀な人材の離職を防止
- サイバーエージェント|独自システムで隠れた才能を発掘
各社がどのような課題に対し、AIをどう活用して解決したのかを具体的に見ていきましょう。
ソフトバンク|AIによるES選考で採用時間を75%削減
ソフトバンクは、新卒採用におけるエントリーシート(ES)の選考にAI(IBM Watson)を導入し、劇的な効率化を実現しました。
毎年寄せられる数万件ものESに対し、AIが過去の合格基準データを学習した上で合否を判定する仕組みです。
AIによる一次判定の後、人事担当者が最終確認を行うフローにすることで、選考の質を落とすことなく、ES確認にかかる時間を約75%削減しました。
これにより、創出された時間を学生との面談やフォローに充てることができ、マッチング精度の向上にもつながっています。
採用担当者の負担軽減と、候補者への丁寧な対応を両立させた代表的な事例です。
参照:ソフトバンク新卒採用選考におけるIBM Watsonの活用について|ソフトバンク
三井住友海上火災保険|AIが異動案を作成し適材適所を加速
三井住友海上火災保険は、全社員の「適材適所」を実現するために、AIを活用した配属・異動案の作成システムを導入しています。
社員の職歴、スキル、希望キャリアなどのデータと、各部署が求める要件をAIが分析し、最適な異動の組み合わせを高速でシミュレーションするものです。
従来は人事担当者が数日かけてパズルのように検討していた異動案作成が、わずか数分で完了するようになりました。
AIが提示した案をベースに、人事が最終調整を行うことで、納得感のある配置転換をスピーディーに行うことが可能です。
データに基づく客観的な配置により、社員のキャリア形成支援と組織力の最大化を目指しています。
参照:人事異動配置業務におけるAI活用の実証実験を開始|三井住友海上火災保険
日立製作所|幸福度を計測し組織のパフォーマンスを向上
日立製作所は、AIとウェアラブル端末を活用して組織の活性度(ハピネス度)を計測し、生産性向上につなげる取り組みを行っています。
従業員の行動データ(身体の動きや対話の頻度など)をAIが分析し、「組織が活性化している状態」を数値化・可視化する独自の技術です。
さらに、AI搭載のアプリが「短い会議の方が活発になる傾向があります」といった具体的なアドバイスを従業員に提示し、行動変容を促します。
この取り組みにより、受注率の向上やコミュニケーションの活性化といった具体的な成果が確認されました。
「幸福度」という目に見えない指標をデータ化し、組織開発に活かしている先進的な事例と言えるでしょう。
日本IBM|退職予兆をAIで検知し優秀な人材の離職を防止
日本IBMでは、自社の人事データとAI(IBM Watson)を活用し、社員の離職防止(リテンション)に取り組んでいます。
給与、評価、残業時間、スキル習得状況などの多様なデータをAIが分析し、退職する可能性が高い社員を早期に把握するシステムです。
退職リスクが高いと判断された場合、上司や人事が早期に面談を行い、キャリア相談や待遇改善などのフォローを実施します。
これにより、重要な人材の流出を未然に防ぐとともに、データに基づいた公平な処遇改善にも役立てています。
感覚的な引き留めではなく、予測データに基づいたプロアクティブな対策を可能にした事例です。
サイバーエージェント|独自システムで隠れた才能を発掘
サイバーエージェントは、社員の才能開花を目的とした独自の人材データベースシステム「GEPPO(ゲッポー)」などを開発・運用しています。
社員のアンケート回答や過去の実績データをAIが分析し、「この部署に合うかもしれない人材」や「調子を落としている可能性がある社員」をピックアップします。
人事担当者はこのリストをもとに、抜擢人事や不調者へのケアを行うことが可能です。
現場の上司だけでは気づきにくい適性やコンディションの変化をAIが補完することで、組織全体の活性化につなげています。
AIを「人事の目を補うパートナー」として位置づけ、埋もれた才能を発掘することに成功しています。
人事部門がAIを活用する3つのメリット
事例からもわかるように、AIは人事の定型業務を効率化するだけでなく、意思決定の質を高める強力なツールです。
人の判断が介在する業務だからこそ、データによる客観的な視点が重要です。
ここでは、人事がAIを活用することで得られる3つの主要なメリットを解説します。
選考や評価における公平性と客観性が向上する
人間が評価を行う場合、どうしても「相性」や「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」が入り込むリスクがあります。
しかし、AIであれば事前に設定された基準に基づいて、すべての候補者や従業員をフラットに評価することが可能です。
例えば、採用選考において学歴や性別などの属性情報を伏せ、能力や適性だけでスクリーニングを行うことも容易になります。
評価の根拠がデータとして残るため、従業員に対するフィードバックの納得感も高まりやすくなるでしょう。
定型業務を自動化し戦略的な人事業務に集中できる
人事部門は、書類選考、日程調整、勤怠管理、給与計算など、膨大な定型業務を抱えています。
これらの業務にAIやRPA(自動化ツール)を導入することで、作業時間を劇的に削減できます。
空いた時間を活用して、経営戦略に基づいた人材ポートフォリオの策定や、従業員エンゲージメントを高める施策の実行など、「人」にしかできない創造的な業務にリソースを割けるようになります。
AIによる効率化は、管理部門から「戦略部門」へと人事の役割を進化させるきっかけとなるはずです。
データに基づく配置で従業員のパフォーマンスが高まる
AIを活用して従業員のスキルや適性を可視化することで、最適な人材配置(タレントマネジメント)が可能になります。
「どの部署に誰を配置すれば成果が最大化するか」をシミュレーションできるため、ミスマッチによる早期離職やモチベーション低下を防げるでしょう。
また、従業員自身も気づいていない適性がデータによって発見され、新しいキャリアの可能性が広がることもあります。
組織の生産性向上と従業員のキャリア満足度を同時に高められる点は、AI活用の大きなメリットです。
人事がAIを活用する際の課題と注意点
AI活用には多くのメリットがある一方で、人事領域ならではの倫理的な課題やリスクも存在します。
これらを無視して導入を進めると、従業員の不信感を招いたり、法的な問題に発展したりする恐れがあり注意が必要です。
AIの判断根拠がブラックボックス化しやすい
AI、特にディープラーニングを用いた分析は、なぜその結果になったのかという「理由」が見えにくい(ブラックボックス化する)傾向があります。
採用の不合格や人事評価の結果について、「AIが決めたから」という説明では、候補者や従業員は到底納得できません。
人事領域でAIを活用する際は、判断の根拠を説明できる「説明可能なAI(XAI)」を選定するか、あくまでAIは参考情報として扱い、最終決定は人間が行うプロセスを徹底する必要があります。
過去データのバイアスが結果に影響するリスクがある
AIは過去のデータを学習して判断基準を作りますが、その過去データ自体に人間の偏見が含まれている場合、AIが差別的な判断を再生産してしまうリスクに注意しなければなりません。
例えば、過去に男性の採用が多かった職種のデータを学習させると、AIが「女性は不向き」と誤って判断してしまう可能性があります。
AIに学習させるデータに偏りがないかを慎重に確認し、定期的にアルゴリズムの公平性を監査する運用を心がけましょう。
個人情報の取り扱いやプライバシーへの配慮が不可欠である
人事が扱うデータには、従業員の評価、給与、健康状態、性格診断など、極めて機微な個人情報が含まれています。
AI分析のためにデータを収集・利用する際は、その目的を従業員に明確に伝え、同意を得ることが大前提です。
「監視されている」という不安を与えないよう、データの利用範囲を透明化し、セキュリティ対策を万全に行う必要があります。
信頼関係が損なわれると、どれほど優れたシステムを導入しても、組織のエンゲージメントは低下してしまうでしょう。
まとめ|AI活用の成功事例を参考に人事DXの第一歩を踏み出そう
人事領域におけるAI活用は、業務効率化だけでなく、公平な評価や適材適所の実現を通じて、組織全体の力を引き出す鍵です。
ソフトバンクや日立製作所などの事例は、AIを「人の代替」ではなく「人を活かすためのツール」として活用している点で共通しています。
まずは自社の人事課題を整理し、採用や配置など効果が出やすい領域からスモールスタートでAI活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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