製造業の新規開拓方法|ターゲット設定から手法の選定まで
元請けへの依存から抜け出したいと考えていても、展示会と紹介以外の方法が分からず、新規開拓が止まっている製造業の経営者や営業責任者は少なくありません。技術力には自信があるものの、その技術を誰に届ければよいのか、どう接点をつくればよいのかが見えにくいのが実情です。
製造業の新規開拓には、受発注の構造や商習慣を踏まえた進め方があります。手法を選ぶ前に、まず「誰に売るか」を決めておくことが、遠回りに見えて近道になります。
そこで本記事では、次の3点を解説します。
- 製造業の新規開拓が難しいといわれる理由と、始める前に整理したい準備
- 製造業に適した新規開拓の手法6つと、それぞれの向き不向き
- 少人数でも開拓量を確保するための仕組みのつくり方
新規開拓の進め方を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
製造業の新規開拓が難しいといわれる4つの理由
製造業の新規開拓には、業界の構造や社内の体制に由来する壁があります。ここでは、代表的な4つの理由を順に整理します。
売上が特定の取引先に依存しやすい
製造業では、元請けや商社を通じた受注が中心になりやすく、特定の取引先に売上が集中する傾向があります。その場合、取引先の生産計画が変わるだけで、自社の業績も大きく振れてしまいます。
さらに、取引先が内製化に踏み切ったり、調達先を海外に切り替えたりすると、受注が一気に減るおそれもあります。依存度が高いほど、新しい取引先を増やして売上の柱を分けておく必要性が高まります。
営業の専任担当者がいない
中小の製造業では、社長や技術者が営業を兼任しているケースが多く、新規開拓に割ける時間は限られます。見積もり対応や現場対応が優先され、新規開拓が後回しになりやすい点も課題です。
株式会社平光製作所は、建築用の装飾金物などを設計・製造販売する企業です。営業は社長を含む3人で行っていますが、全員が他の業務と兼任で、新規営業に手が回らない状態でした。閑散期に自社工場の稼働率が下がると、業績に直接響くという悩みも抱えていました。
同社は「Sales Platform」を導入し、電話営業で営業エリアを広げています。3年間で延べ約3万件(重複を除くと実質約2万件)のアプローチを行い、その結果、現在まで取引が続いている新規取引先が10社増えました。
展示会と紹介以外の接点をつくりにくい
従来の主力手段だった展示会は、出展費用と準備にかかる工数の負担が大きい手段です。人手が限られる企業にとっては、継続して出展すること自体が難しい場合もあります。
紹介は信頼につながりやすい一方で、母数が限られ、狙った業種に広げることが難しい点が課題です。この2つだけに頼っていると、新しい接点が一定の範囲にとどまりやすくなります。
技術の強みが相手に伝わりにくい
公差や材質といった技術的な強みは、そのままでは発注側に伝わりにくいことがあります。発注側が知りたいのは「何ができるか」よりも、「自社の課題をどう解決してくれるか」です。技術の言葉を、発注側にとっての利点の言葉に言い換える必要があります。
株式会社有川製作所は、金型の設計製作と金属プレス加工を専門とする企業です。金型は1個あたり安くても45万円、高いと200万円になるため、投資回収のイメージを持ってもらうことが課題でした。同社の有川氏は、他社では5工程かかる製造を3工程に短縮できるため、金型費用がやや高くても、結果的に品質が安定して製品コストが下がると説明しています。そのうえで、この付加価値をどう伝えるかが今後の重要な点だと語っています。
新規開拓を始める前に整理したい3つの準備
手法を選ぶ前の準備を飛ばすと、リストを買っても電話が続かない状態に戻ってしまいがちです。ここでは、始める前に整理しておきたい3つのポイントを紹介します。
自社の技術が活きる工程・用途を洗い出す
まずは、既存の受注実績から、どんな形状・材質・ロットの案件で選ばれてきたかを整理します。価格だけでなく、納期や品質、小ロットへの対応など、選ばれた理由まで振り返ると、強みが見えやすくなります。
次に、得意な工程を「発注側にとっての利点」に言い換えます。たとえば「小ロットに対応できる」は、「試作から量産への切り替えが早く、開発期間を短縮できる」と言い換えられます。「高精度の加工ができる」は、「組み立て時の調整工数を減らせる」と伝えると、発注側が自社の課題と結びつけやすくなります。
発注側の業種からターゲットを設定する
同業他社ではなく、自社の加工を必要とする発注側の業種を狙うという考え方です。たとえば精密板金であれば、装置メーカーや医療機器メーカーが候補になります。候補が挙がったら、業種・エリア・従業員規模の3つの条件で絞り込んでいきます。
株式会社伸和工作所は、大手1社からの受注に頼っていた時期を経て、はじめて新規営業に取り組んだ企業です。2020年2月に「Sales Platform」を導入した直後は、大手企業にアプローチしてもアポイントが取れませんでした。その後、アイドマのデータ分析でターゲットを絞り、工場直通のアプローチに切り替えた5月頃から、一気にアポイントが取れるようになったとされています。
目標と進め方を数値で決めておく
月に何社へアプローチし、何件のアポイントを目指すのかを、先に決めておきます。数値があれば、うまくいっているかどうかを後から判断しやすくなります。また、短期間で結論を出さず、一定期間は継続して検証する前提を持つことも大切です。
アイドマの営業支援の実績では、金属製品メーカーが製造業向けに行ったテレアポのアポ率は、発信1回あたり約1.4%でした。この数値から逆算すると、アポイント1件あたり約70件の架電が目安になります。たとえば月5件のアポイントを目指す場合は、月350件ほどの架電が必要という計算です。
なお、この数値はあくまで一例です。商材やリスト、トークの内容によって変わるため、自社で検証しながら調整していく必要があります。

製造業に適した新規開拓の手法6選
新規開拓の手法には、それぞれ向いている企業の条件と注意点があります。ここでは、製造業で使われる6つの手法を順に紹介します。
テレアポ
テレアポは、決裁者に直接つながりやすく、反応の有無が短期間で分かる手法です。自社の技術に合う業種へ絞って架電すれば、反応を見ながらターゲットやトークを改善できます。狙う業種がはっきりしていて、まず接点の数を増やしたい企業に向いています。
一方で、受付を突破できるかどうかが課題になりやすい手法でもあります。技術用語を並べると断られやすいため、最初の一言は専門用語を避け、相手の関心を引く内容にする工夫が必要です。
株式会社アオキシンテックは、図面を受け取って見積もりを出す受注生産型の企業です。そのため、トークでは専門的な説明よりも、まず興味を持ってもらい「図面を送ってもらう」ことを最初のゴールにしました。また、リストを使って購買部門や工場など発注に関わる部署へ直接アプローチできたことも、成果につながったとされています。
アイドマの営業支援の実績では、金属製品メーカーが製造業向けに行ったテレアポのアポ率は、発信1回あたり約1.4%でした。担当者につながった率は約17%です。
フォーム営業
フォーム営業は、Webサイトの問い合わせフォームから送信する手法です。担当者が不在でも内容が届くため、電話がつながりにくい企業にも接点をつくれます。テレアポの前段として接点を増やしたい企業や、電話での接点づくりが難しい企業に向いています。
ただし、定型文のまま送ると読まれにくくなります。相手企業の製品や事業に触れた文面にすることが欠かせません。送信前に、営業目的の問い合わせをお断りする旨がサイトに書かれていないか、確認しておくと安心です。
メール営業とナーチャリング
製造業は検討期間が長い傾向にあるため、一度の接触で終わらせない設計が必要です。加工事例や対応できる材質、納期の目安などを定期的に届け、発注のタイミングが来たときに思い出してもらえる状態をつくります。この考え方を「ナーチャリング(見込み客の育成)」と呼びます。
すぐに案件化しない企業とも関係を保ちたい場合に向いています。注意点は、メールの送信先や本文の表示事項について、特定電子メール法などのルールを守る必要があることです。
展示会・商談会
展示会や商談会は、来場者が自ら情報を集めに来ているため、技術の説明が伝わりやすい場です。実物やサンプルを見せながら説明したい企業に向いています。
注意したいのは、出展後のフォローです。あらかじめ設計しておかないと、集めた名刺が活かされないまま終わってしまいます。名刺交換のあとに、いつ、どの手段で連絡するのかを、出展前に決めておきましょう。
自社Webサイトの整備とSEO
加工方法や対応できる材質で検索されたときに、自社が見つかる状態をつくる手法です。対応できる加工、材質、ロット、納期の目安などをページにまとめておくと、発注側が探しやすくなります。
成果が出るまでには時間がかかるため、他の手法と並行して進める前提で考えます。
株式会社上村精工は、以前から自社サイトなどによるプル型営業で一定の成果を得ていました。さらに成果を伸ばすには、自社から働きかけるプッシュ型営業が必要だと考え、2022年8月末に「Sales Platform」を導入しています。1年間で、新たにつながりを持てた企業は300社を超えました。ただし、すぐに売り上げにつながったわけではなく、今後はそのつながりを育てる段階に入るとのことです。なお、「300社超」は取引先の数ではなく、つながりを持てた企業の数です。
営業代行の活用
社内に営業のリソースがない場合の選択肢が、営業代行です。専任の担当者を置けず、リスト作成や架電に手が回らない企業に向いています。
自社で進めるか外部に任せるかは、社内の工数、必要なスピード、予算の3点で判断します。注意したいのは、すべてを任せきりにしないことです。ターゲットや伝えたい強みは自社で整理し、共有しておくことで、成果が出やすくなります。
少人数でも開拓量を確保する仕組みのつくり方
手法が決まっても、人手が足りずに続かないという悩みは残ります。ここでは、少人数でも開拓量を確保するための仕組みを、営業支援ツール「Sales Crowd」を例に紹介します。
営業リストの作成を効率化する
営業リストの作成に工数を取られると、アプローチに回す時間が足りなくなります。ネットで企業情報を探して表計算ソフトに転記する作業は、思いのほか時間がかかります。
Sales Crowdは、1,000万件以上の企業データベースを標準で搭載した営業支援ツールです。地域・業種・売上・従業員数などの条件でターゲット企業を絞り込み、そのままリストにできます。前章で整理した業種・エリア・従業員規模の条件をあてはめて抽出できるため、リストの購入や転記の手間を減らせます。
架電・メール・フォーム送信を一元管理する
手法ごとにツールが分かれていると、誰にいつ何をしたのかが分からなくなります。その結果、同じ企業に重複して連絡したり、フォローの機会を逃したりしかねません。
Sales Crowdでは、パソコンからワンクリックで架電でき、電話もメールも同じシステムから実行できます。架電しても不在だった相手には、自動で追撃のメールを送る機能もあります。
アプローチの結果は自動で蓄積され、活動履歴として残るため、担当者が替わっても経緯を引き継げます。
商談化しなかった企業を育てる
断られた企業も、設備投資や取引先の変更といったタイミングで、見込み客に戻ることがあります。そのため、断られた理由や接触の履歴を残し、継続してアプローチする運用が大切です。
Sales Crowdには、メールの開封通知やURLのクリック測定によって、見込み客の「温度感」を把握できる機能があります。履歴を見ながら、反応のあった企業から優先して連絡すれば、限られた人数でも効率よく見込み客を育てられます。
自社で運用する余力が少ない場合は、Sales Crowdを活用しながら電話営業まで任せられる、新規開拓の支援サービス「Sales Platform」という選択肢もあります。
まとめ|製造業の新規開拓はターゲット設定から始める
ここまで、製造業の新規開拓が難しい理由から、準備、手法、仕組みづくりまでを解説しました。最後に要点を振り返り、始めたあとに挫折しないための観点を整理します。
新規開拓を続けるために押さえたい3つのポイント
- 最初から複数の手法を同時に進めず、1つずつ反応を見て、手応えのある手法に絞ります。判断に必要な最低限の試行数も、先に決めておきましょう。
- 断られた理由を分類して記録します。ターゲットの設定や伝え方の課題が見えるうえ、担当者が替わっても引き継げます。
- 社内の工数、必要なスピード、予算の3点で、自社で進めるか、ツールの導入や営業代行を使うかを判断します。
ターゲットを定めてから手法を選ぶことが近道
新規開拓は、自社の技術を必要としている発注側の業種を特定することから始まります。ターゲットが定まれば、どの手法が合うのか、どれくらいの量を目指すのかも決めやすくなります。
人手が限られていても、営業リストの作成から架電、メールまでを仕組みにすれば、継続しやすくなります。ツールや営業代行の比較については、「製造業におすすめの営業支援サービス10選」もあわせてご覧ください。
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