M&Aのメリット・デメリットは?買い手・売り手側から徹底解説

M&A検討中の企業

買い手と売り手双方が納得できるM&Aが理想的

かつてM&Aというと、買い手側の大企業が業績不振となった売り手側企業の弱みにつけこみ、一方的な条件をつきつけるというネガティブなイメージでした。しかしM&Aの市場が活況である現在は、友好的な交渉の上で、売り手側と買い手側の双方が納得できる条件で成立させるべきという考え方が一般的になりました。

そのためM&Aを成功させるためには、買い手と売り手の双方が相手側が得られるメリットについてよく理解したうえで交渉に臨むことが理想的です。今回は買い手と売り手それぞれのM&Aにおけるメリット、そしてデメリットについてもわかりやすく解説します。

M&Aのメリット【買い手側】

買い手側がM&Aを行う理由は、一言でいうと「時間と手間を節約して、最大限の成果を出すため」です。新規事業を成長させること、自社の弱みを克服すること、ライバル会社に差をつけること。どれも企業が常に抱える重要な課題ですが、M&Aで魅力的な他社の事業を買収することにより、これら全てが最小限のコストで実現できます。

また買収先の企業が抱えている負債ですらも、自社の節税対策に利用することが可能です。ここでは買い手側企業がM&Aに期待できるメリットについてそれぞれ詳しくご紹介しましょう。

短期間で事業を成長させられる

通常、1つの事業を成長させるのには大変な時間を要します。特に新たな分野に新規参入する場合、ノウハウを積み上げ、少しずつ販路を広げていくという段階を経て、やっと幾ばくかの利益が上がってくるものです。ですがそれだけ時間をかけても結果的に事業そのものが失敗するというリスクもあり、新規事業の成功率は5%とすら言われています。

その点、M&Aによってすでに完成された企業を取り込めば、その分野で必要なヒト・モノ・コトがいっぺんに手に入ります。分野によっては事業に必要な許認可もそっくり受け継ぐことができます。圧倒的な時間の短縮になり、すでに買収先事業の実績があるので、一から新規参入するよりリスクも少ないでしょう。

また新規参入に限らず、すでに自社が手掛けている事業においても、同業の企業を取り込むことで一気に事業規模を拡大させることができます。

費用を抑えて事業を拡大できる

M&Aは、時間だけでなく費用面でも買い手側企業にメリットをもたらします。M&Aで同じ業界の企業を取り込み事業規模を拡大させることで、生産量を格段に増やすことができます。量が増えれば、それだけ1個あたりの生産コストは下がりますから、さらに自社のマーケットにおける競争力を伸ばすことができるのです。

生産工程以外にも、シェアを伸ばすことで物流や販売など様々な面でコストを抑えることが可能です。大きなシェアを獲得するほど、取引先との交渉力も上がることが期待できるでしょう。

また新たな分野やエリアに事業を拡大するとき、通常であれば一から生産設備や拠点となる建物を構えなくてはなりませんが、M&Aでそうした有形の資産ごと受け継ぐことで大幅なコストカットになります。

税金の負担を抑えられる

M&Aには事業譲渡、会社分割、資本業務提携など様々な手法があり、中でも最も一般的なのが株式譲渡です。この株式譲渡では買い手は買収先企業の赤字もそのまま受け継ぐことになります。ですが相手企業に赤字があることも実はM&Aの大きなメリットになるのです。

というのも、もし買収先の企業が赤字を抱えていたとすると、M&A成立の翌年以降から7年間、買い手企業はその赤字がゼロになるまで自社の黒字と相殺して計上することができるからです。これにより法人税の対象となる黒字額を抑え、買い手企業は大幅に節税することが可能です。

他にも、税金の安い国の企業を買収し、そちらに拠点を置くことでより少ない法人税を納めるという節税対策もあります。

競合他社を吸収できる

ある程度成熟した市場においても、M&Aは有効な一手となります。常に目新しい商品やサービスを提供し続けることで競合他社に差をつけられればよいのですが、多くの場合、シェア獲得のために企業はいずれ価格競争を余儀なくされます。そして他社より少しでも価格を下げようとコストカットを繰り返すうちに、会社も業界全体も疲弊していくことになるのです。

もし競合他社を吸収することができれば、一気にシェアを伸ばして、この値下げ合戦から抜け出すことができます。市場で大きなシェアを獲得していれば、それだけでブランド力も上がりライバル企業に差をつけることができるでしょう。安い価格を売りにするよりも、ずっと持続性を維持できるようになります。

M&Aのメリット【売り手側】

M&Aのメリット【売り手側】

近年では売り手側がM&Aで得られるメリットについても注目されています。特に優れた技術やノウハウを持ちながら、後継者不在のために廃業しなくてはならない場合など、M&Aによる事業の譲渡は魅力的な解決方法です。

また売り手側企業の経営者にとっても、M&Aで事業を譲渡することは、会社を廃業という形で清算するより金銭的に大きなメリットがあります。より大規模な企業に会社を託せば、従業員の雇用を守ったり、取引先の信頼に応えなくてはならないというプレッシャーからも解放されるでしょう。ここでは売り手側のメリットについて、より詳しく解説します。

廃業リスクを回避できる

M&Aは売り手側の企業にとって、事業を継続させるための1つの手段です。例えば長年培ったノウハウや、大きな可能性を秘めた新技術を保有している企業が、予期せぬ外的な要因によって財務状況が悪化したとします。自力で立て直すことが難しいとなると、廃業してせっかくのノウハウや技術もそのまま失ってしまうことになるのです。

ですがM&Aでは、現在の財務状況よりも将来的にどれだけの利益が見込めるかが重視される傾向にあります。自社の真の価値を認めてもらい、より経営の安定した企業の傘下に入ることで、今後もその技術やノウハウを社会に提供し続けることができるのです。

現在、中小企業の廃業は、その企業だけでなく日本経済全体の深刻な問題となっています。中小企業の割合が多い日本では、廃業する中小企業の増加は、経済全体の鈍化をまねくことになります。政府も、M&Aによって中小企業の技術と雇用を守ることを積極的に後押ししています。

売却益を得られる

すでに述べたように、M&Aには様々な手法があります。その中でも事業譲渡や会社分割といった方法では、会社の一部分だけを手離すことが可能です。例をあげると、多角的に事業を展開している企業において、不動産の事業部の業績が悪化しているとします。この不動産事業をM&Aによって売却すると、その売却益でその他の事業を強化し、会社をさらに発展させることができるのです。

また会社全体を売却する場合も、その売却益は売り手側の経営者にとって大きな魅力です。もし売却せず廃業することになると、経営者には従業員への補償や金融機関への支払い、会社の設備や在庫などの処分費が全てのしかかってきます。ですがM&Aによって会社ごと売却すればそうした負担はなく、逆に多額の売却益でリタイア後の人生を楽しむことができるでしょう。

従業員の雇用を維持できる

多くの経営者にとって何よりも重要なのが、M&Aであれば会社は継続し、従業員の雇用が維持できるということです。一般的にM&A成立後は、従業員はそのまま買い手側の企業に雇い入れられることになります。大手企業に売却された場合は、現在よりも待遇面が改善する可能性もあります。

特に近年では、元売り手側企業の社員をしっかりと保護し、買い手側の社員と待遇で差をつけないようにすることで一体感を高め、M&A成立後のシナジー効果を最大限にしようとする動きが主流です。もちろん買い手側が人材を重視せず、売り手側企業の顧客やインフラなどの獲得だけを目的としている可能性もゼロではありません。従業員の雇用をしっかり守るためには、交渉時に売却条件として明示しておくといいでしょう。

後継者問題を解消できる

中小企業の経営者にとって、後継者の確保は常に悩ましい問題です。昔のように経営者の子どもなど身内の人間が受け継いでくれればよいのですが、近年では若い人たちが地方の中小企業の後継者となることを敬遠する傾向があります。また従業員の中から後継者を選ぼうにも、会社の株式を買い取るだけの資金を本人が用意できないというケースもあります。

M&Aによって他の会社に事業承継する道を選べば、新たな経営陣を迎えて事業をその後も継続させることができます。また自力で後継者を確保して事業承継する場合には、会社経営に必要なノウハウを伝えるなどの育成の手間もありますが、M&Aではそういった負担を売り手側の経営者が負う必要もありません。

M&Aのデメリット【買い手側】

M&Aのデメリット【買い手側】

買い手側に大きな利益があるイメージの強いM&Aですが、企業の買収は様々なリスクを伴います。資金の調達も大きな課題ですし、買収後にコストを上回る利益を出すことができなくては、そのM&Aは失敗に終わってしまいます。さらには買収先企業の社員と自社の社員の軋轢や、買収によって引き継ぐことになってしまった予期せぬトラブルなども起こり得ます。

特に買い手側の企業にとって、M&Aでは「リスクをどこまで回避できるか」というのが重要となってきます。事業を譲り受ける際の注意事項をしっかりと理解しておきましょう。

買収資金を集めなければならない

企業の買収にはまず何よりも資金が必要です。当然ながら魅力的な企業ほど、その買収額は高額になります。無理をして買収額が高い企業とM&Aを行ったために、結局赤字になってしまったということがないよう注意しなくてはなりません。また中小規模の企業であっても、希少性のある技術などを保有している場合、当初の予想を大きく上回る評価額がつく可能性があります。

このような技術力やブランド力、買収後のシナジーなど、企業が有する形の無い資産を「のれん」と呼びます。M&Aの買収金額は、企業の純資産にのれん代をプラスした額で算出されます。のれん代が高額になるほど買収後の利益も見込めるので、自己資金で賄えない場合は、融資によって資金を確保することもできるでしょう。

買収後に利益が出ない可能性がある

M&Aでは、買収後に買い手側が期待していたほどの利益が得られなかったという事例も多く見られます。これはほとんどの場合が、買収先企業の純資産よりも、2社が1つになることによって得られる相乗効果、シナジー効果に期待をしてM&Aを行っているためです。明確な数字として計ることのできる純資産とは違い、どれだけのシナジーが得られるかは実際に事業を動かしてみるまで答えが出ないので、常にリスクがつきものです。

M&Aによって事業を拡大すれば、利益も上がりますが、管理コストなども増えることになります。もし予想していた利益の水準に達しなかったとき、買収額や管理コストによって結果的にマイナスになってしまう可能性もあるでしょう。それを防ぐためには、買収前にしっかりと相手先企業の価値を査定し、事実ベースで判断することで過大評価はしないことが重要です。

買収した企業の従業員が不満を持つ場合がある

シナジー効果を最大限にするためにキーとなるのは、売り手側の社員と買い手側の社員の融和です。現場で一緒に働くメンバー同士に軋轢があると、チームプレーに支障をきたし、期待していたような業績を上げることができないでしょう。特に売り手側の社員は、仕事環境や業務上のルールなど全て買い手側に合わせることになるので、ストレスを感じやすくなります。もし待遇面や社内評価で、元売り手側の社員であることを理由に不当に扱われていると感じると、せっかくの人材が離職してしまうかもしれません。

売り手側の社員達を上手くフォローするためには、彼らのまとめ役である人物と密に連携をとる必要があります。できればM&Aの成立前からコンタクトをとり、成立後には売り手側のメンバーの中でリーダーシップを発揮して、しっかり現場をまとめてもらいたいというビジョンを伝えておきましょう。

買収後に問題が発覚するかもしれない

予測のつかないM&Aのリスクの中でも最も深刻なのが、買収先企業の財務リスクを引き継いでしまうことです。例えば未払いの残業代や社会保険料、買掛金などです。あるいは債務保証、従業員や顧客とのトラブル・環境汚染などで訴えられた場合の損害賠償、回収不能な売掛金、先物取引による損失などは、売り手側の企業ですら、その負債が発生することを確実に予測はできないものです。

こうした問題が買収後に発覚すれば、買い手企業は甚大な経営ダメージを受ける怖れがあります。M&Aの前に売り手企業の財務調査を行うときには、相手側の意図的な粉飾だけではなく、こうした将来的な財務リスクも念頭においておくべきでしょう。

M&Aのデメリット【売り手側】

M&Aのデメリット【売り手側】

M&Aはよく結婚になぞらえて語られますが、この例えは特に売り手側の企業に当てはまります。ご縁がなくて良い相手と巡り合えない。結婚後に周囲の人達との関係がこじれてしまう。結婚前のような自由が無くなる。何よりも結婚生活にストレスを感じる。これらの結婚にまつわる一般的な悩みこそ、M&Aで売り手側企業が心構えをしておくべきリスクに通じるものがあるのです。

M&Aに動き出す前に、売り手側企業のデメリットである4つのポイントについてしっかりと理解しておきましょう。

買い手が見つからない可能性がある

M&Aにおいて、売り手側が自社に魅力を感じてくれる買い手企業を見つけるのは、容易なことではありません。M&Aが盛んな現代では、売り手となる同業他社が数多く存在しています。その中から選ばれるためには、独自の技術などのアピールポイントが無くてはなりません。またM&Aの相手として選ばれたとしても、企業価値が評価されず、希望の価格で取引できない可能性もあります。

M&Aではタイミングが非常に重要です。魅力的な買い手企業と巡り合えるかは、事業を売り出すタイミング次第ですし、自社の技術がどれだけ評価されるかも、市場の動向に左右されることになります。ある程度は運に任せるしかありませんが、少しでも早くにM&Aに動き出すことで、チャンスを掴む可能性を広げられるでしょう。

取引先や顧客との関係が悪化するリスクがある

M&A成立後は、売り手側は多くの場面で買い手企業のやり方に合わせる必要が出てきます。長年の付き合いがある企業との取引においても、契約内容を大幅に変更することになるかもしれません。そうすると当然、取引先企業からは何らかの反発が予想されます。

このとき相手先企業と信頼関係のある自社の担当者がフォローできればいいのですが、M&Aで経営体制が変わったことによって、担当者も変更している場合があります。そうなると取引先企業は、新しい担当者から一方的に契約内容の変更を突きつけられることになり、最悪の場合は取引中止という結果になってしまいます。長年大切にしてきた取引先の信頼を失わないためにも、あらかじめ先方に丁寧な説明をしておくのがよいでしょう。

経営権が縮小してしまう

現在は、交渉によって売り手と買い手の条件を擦り合わせ、互いが納得したうえでの成約を目指す友好的M&Aが理想とされています。しかしM&Aでは、どうしても売り手側の立場が弱くなってしまうというのが現実です。特にM&A成立後は、経営の主導権を握るのは買い手側企業の経営陣です。経営方針や人事など、売り手側は買い手側の方針に従わなくてはなりません。

統合後ほとんどの場合、売り手側の経営者は影響力を失うことになります。そのためM&Aの交渉段階で、できるだけ入念に統合後の経営方針などで買い手側と打ち合わせをしておくかなくてはなりません。もちろんどれだけ要望を伝えておいても、実際には交渉段階で話し合っていたのとは違った経営方針に変更する可能性があります。

従業員が不満を持つ可能性がある

M&Aでは売り手側の社員に大きな負荷がかかります。仕事内容や勤務地が変わるかもしれませんし、待遇が悪くなる可能性もあります。最悪の場合は経営体制が変わることによって、リストラの対象となってしまうかもしれません。それほど大きな変化が無かった場合でも、日常の業務の細かな部分で全て買い手側のルールに合わせなくてはならないのは、かなりのストレスです。

何よりも、長年愛社精神や経営者との絆を支えとして頑張ってきた社員ほど、買収によってモチベーションを低下させられるでしょう。売り手側の経営者には、こうした従業員たちへの丁寧な説明とフォローが求められます。また事業を譲渡した後も自社の従業員を守りたいと思うなら、M&Aの交渉時に売り手側企業の社員の待遇についてもしっかりと条件に盛り込んでおくようにしましょう。

多方面のリスクを考えてM&Aを進めよう

多方面のリスクを考えてM&Aを進めよう

今回はM&Aにおけるメリットとデメリットを、買い手側と売り手側のそれぞれの立場から解説しました。これまで見てきて分かるように、双方にM&Aのメリットは比較的シンプルで分かりやすいものばかりです。

重要なのは、いかに多方面に及ぶデメリットに対処するかということ。予想できるリスクを回避するために、相手先企業の選定から交渉の最終段階にいたるまで、しっかりと対策を立てる必要があります。また交渉相手の企業が抱える悩みや不安を理解することで、よりスムーズに話を進め、M&A成功の確率を上げることができるでしょう。

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