事業承継税制5つのデメリット|メリットが大きくなるケースとは?

事業承継が決まった企業

事業規模によっては事業承継で多額の税金が発生する

今ある事業を今後も長く続けていくためには、資産や経営権を後継者へ引き継いで行く必要があります。これが事業承継です。経営に関するあらゆるものを引き継がなければなりませんが、引き継ぐ資産の一つに自社株式があります。

この自社株式の評価額が高いほど、多くの相続税が課税されるのはご存じでしょうか。後継者に引き継ぎたいけれど、高額な税金がネックとなっている経営者も多くいます。そこで設けられた制度が「事業承継税制」です。

しかしケースによっては、制度の利用がデメリットになる可能性もあります。まずはしっかりと事業承継税制について知ることが大切です。今回は事業承継税制の詳細や、デメリットを解説します。メリットが大きくなるケースも解説するので、事業承継を考えている経営者様は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも事業承継税制とは?

事業承継税制を利用するべきかどうか判断するためには、まず制度について詳しく知る必要があります。事業承継税制とは、経営者から自社株式を引き継いだ際に発生する納税義務が、猶予される制度です。本来であれば事業承継で自社株式を引き継いだら、額に応じた相続税や贈与税を支払わなければなりません。

しかし制度を利用することにより、支払うべき税金の猶予を受けられるのです。猶予と聞くと納税の先送りのように思えるかもしれませんが、最終的には「免除」されることを想定しています。

この制度を適用するためには、一定の要件を満たし続けなければなりません。しっかりと満たしていれば後継者が死亡または、もしくはさらに次の後継者へ相続が発生した時点で免除されます。ただし途中で取消事由に引っかかった場合は、猶予されていた税金に加えて利子税を支払わなければなりません。詳しくはのちほど解説します。

事業承継税制の目的

事業承継税制は、中小企業の事業承継を促進する目的で2008年に創設されました。事業承継における課題はいろいろあります。そのなかの一つが、後継者の株式譲渡の際に発生する相続税や贈与税の支払いです。そこで将来的に次の後継者へ事業承継できることを条件に、相続税や贈与税を免除する制度を作りました。

例えば初代経営者が2代目に事業を引き継ぎます。ここで本来ならば財産分の相続税または贈与税を支払わなければなりません。しかし事業承継税制を利用することで猶予されます。その後3代目に事業承継できれば、これまで猶予されていた税金が免除されるのです。株式の渡し方は贈与でも相続でも大丈夫ですが、売買で渡す際には適用できません。また後継者が親族でなくても利用できます。

事業承継税制は個人事業主でも利用できる

事業承継税制が創設された当初、対象となるのは法人のみでした。しかし2019年の税制改正により、個人事業主向けの事業承継税制が創設されました。法人を対象とした事業承継税制よりも、手続きは簡素になっています。しかし「青色申告する」「一切の取引を詳細に記録する」など、一定の要件を満たさなければ利用できません。

大きなメリットはありますが、要件には細かい項目も多いので、しっかりと確認することが大切です。

事業承継税制のデメリット

事業承継税制のデメリット

中小企業の事業承継を促進する目的で創設された事業承継税制ですが、ほとんど利用されていませんでした。2019年に大幅に改正されましたが、活用を迷う企業も多いようです。その原因はデメリットの多さが考えられます。考えられる主なデメリットは以下です。

  • 制度がわかりにくい
  • 手続きの負担が大きい
  • 要件を満たし続けなければ課税される
  • 対応してもらえる専門家が少ない
  • 専門家に依頼すると費用がかかる

詳しく解説します。事業承継税制を検討する際の参考にしてください。

制度が分かりにくい

事業承継税制の利用が増えない背景の一つに、制度の分かりにくさが挙げられます。制度を受けるためには複数の要件を満たさなければなりません。例えば法人で相続税猶予のために事業承継税制を利用する場合、次のような要件があります。

  • 被相続人は会社の代表権を有していたことがあるか
  • 承継直前に50%を超える議決権を保有しているか
  • 後継者が会社の代表権を有しているか
  • 後継者は相続開始時に50%を超える議決権を保有しているか
  • 都道府県知事の円滑化法の認定を受けているか
  • 非上場の中小企業か
  • 常時使用従業員数は1名以上か

実は上記の要件はほんの一部で、実際にはまだ細かい項目があります。これらをすべて満たす必要があるのです。そのためすべての項目を満たしているかを確認するだけでも大変な手間となります。

手続きの負担が大きい

要件に加えて手続きに関する負担の重さもデメリットとなります。昔に比べると軽減されているとはいえ、煩雑な手続きはまだまだ多いのが現状です。また都道府県によって必要な書類の量や種類に大きなばらつきがあります。場所によっては多くの添付書類の準備や提出が義務付けられており、一度で完璧に資料を揃えられる例は少ないようです。

特に常時雇用従業員数が5人以下の小さな企業は、申請書への記載項目が多数あります。手続きにはかなりの時間と手間がかかると覚悟する必要があるでしょう。

要件を満たし続けなければ課税される

事業承継税制は一度要件を満たせば終わりではありません。最初の5年間は毎年、その後は3年おきに継続届出書の提出が必要です。他にも「後継者が代表ではなくなった」「廃業した」「自社株式を譲渡した」などの事由が発生すると、猶予は取消となります。

5年以内に猶予取り消しとなった場合、これまでの猶予額全額と利子税を支払わなければなりません。額が高額なので届け出をうっかり忘れてしまうと、大きなリスクとなるでしょう。経営に影響を及ぼすこともあるかもしれません。取消事由に該当しないよう、要件を満たし続けなければならないことも経営者にとってデメリットになるようです。

対応してもらえる専門家が少ない

ここまで読んでいただければ想像がつくと思いますが、事業承継税制の手続きは面倒なことが多いです。免除できれば大きなメリットとなりますが、たどり着くまでには長い年月がかかります。そこで専門家に対応をお願いしたいところですが、対応してくれる専門家が少ないのが現状です。

適用要件を満たすことができても、数ある打ち切り事由がすべて頭に入っていないと対応は難しいでしょう。下手すれば損害賠償沙汰となるかもしれません。そのためこの制度に消極的な専門家も多いようです。依頼するのであれば、実績がどのくらいあるのかも細かく確認して選ぶようにしましょう。

専門家に依頼すると費用がかかる

当然ですが、専門家に依頼すると費用がかかってしまいます。事業承継税制だけではなく、相続税や贈与税についても併せて依頼すれば、費用が高額になることもあるでしょう。企業規模や依頼内容で金額は変わりますが、100万以上かかるケースも珍しくありません。

費用を超える高額な税金が免除されるなら利用するメリットはありますが、費用対効果をよく考えて判断しましょう。

事業承継税制のメリットがあるケースと他の事業承継方法

事業承継税制のメリットがあるケースと他の事業承継方法

では事業承継税制は、どのような企業にメリットがあるのか疑問に思う人もいるでしょう。ここではメリットが得られるケースと、他の事業承継方法について解説します。

自社株評価額が高い

自社株の評価額が高い場合は、事業承継税制を使うことでメリットが得られる可能性が高いでしょう。評価額が1億円以上あるなら制度を利用するのがおすすめです。逆に1億円以下であれば、余計な手間が増えるだけの可能性があります。なぜなら相続税には基礎控除があるからです。基礎控除の計算式は次のようになります。

(600万円×法定相続人の数)+3,000万円 =基礎控除額

例えば法定相続人が4人いる場合、基礎控除額は5,400万円となります。この金額を下回る評価額であれば、相続税はかかりません。

また贈与で相続時精算課税制度を選択した場合、1人につき2,500万円までは非課税で贈与可能です。つまり4人に贈与する場合、最大1億円までは贈与税がかかりません。事業承継税制を検討する際は、自社株式の評価額と基礎控除額を算出して比べてみましょう。

良好な業績が続いている

業績が好調な企業も、利用することでメリットを得られる可能性が高くなります。事業承継税制は、納税猶予開始から5年は特に厳しい要件があります。この間に廃業や収入がゼロになった場合、猶予額全額と利子税を支払わなければなりません。

しかし5年間事業を継続できれば、以降はゆるい要件となり納税猶予も得られます。そのため事業承継から5年以上は良好な業績が維持できると判断した場合は、利用することでメリットを得られるでしょう。

M&Aで事業承継する

事業承継税制は自社株式の評価額が高く、業績が好調な場合にメリットが得られる可能性が高いです。ではそれ以外は多額の税金を支払うか、廃業するしかないのでしょうか。そこで選択肢の一つとして提案したいのがM&Aで承継する方法です。

事業承継税制を利用しても、5年以内に廃業したら全額支払わなければなりません。もし利用しない場合は、相続や贈与発生時点で多額の税金を支払うことになります。しかしM&Aを利用して第三者へ事業を売却すれば、相応の現金収入を得ることが可能です。作り上げてきた事業も受け継がれていきます。廃業に比べれば大きなメリットといえるのではないでしょうか。

事業承継税制を使うなら相続時精算課税か暦年課税のどちらを選択するべき?

事業承継税制は5年以内に廃業すると、猶予されていた税金と利子税を支払わなければなりません。しかし5年後も事業を続けていられるか、自信がない企業もあるでしょう。そこでおすすめなのが、相続時精算課税の選択です。贈与方法には、暦年課税と相続時精算課税があります。

暦年課税とは、1年間に贈与された合計金額で贈与税を計算する方法です。年間110万円の基礎控除があり、それ以下であれば贈与税はかかりません。一方、相続時精算課税を選択すれば基礎控除はありませんが、合計2,500万円までは贈与税が非課税となります。

つまり多額の贈与をしたい場合は、相続時精算課税を選択することで、多くの自社株式を税の負担を抑えて一度に移転できます。2,500万円を超えた分の贈与税率は一律20%です。もし暦年課税で贈与した場合、金額に応じた税率が課せられます。3,000万円を超えた場合の税率は55%とかなり高額です。

ただし相続時精算課税は、先代経営者が亡くなり相続が発生した際に、贈与した財産が相続財産として再計算されます。しかし税率が20%と低く、すでに支払った贈与税は控除されるので、結果的に安く済みます。

つまり相続時精算課税を選択しておけば、事業承継税制のリスクを抑えることが可能です。仮に事業承継税制を利用した3年後に廃業してしまったとしても、支払う税金は暦年課税時より大幅に安くなります。

事業承継税制後にM&Aを利用して売却した場合も、相続時精算課税を選択しておけば支払いは株価の20%で済みます。売却したお金も十分手元に残せるでしょう。

計画的に事業承継の手続きを進めることが大切

計画的に事業承継の手続きを進めることが大切

事業承継税制のデメリットや、メリットがあるケースについて解説しました。事業承継税制は多額の税金を免除できる可能性があります。しかし複雑な手続きも多く、途中で中断したら猶予されていた税金に加えて利子税を支払わなければならないリスクもあります。

デメリットもしっかりと把握したうえで、制度の利用を検討しましょう。事業承継は考えなければならないことがたくさんあります。トラブルを防ぐためにも、早めに計画を立てて進めることが大切です。

この記事を書いた人

DX支援メディア編集長
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