M&A戦略とは?成功につなげる策定のポイントや手順

M&A戦略を考える男性

M&Aを成功させるには適切な戦略立案が不可欠

事業拡大のための一つの選択肢であるM&A。すでに実績のある事業を買収し、自社の事業拡大を目指したいと考える経営者の方は多いでしょう。成功すれば大きく事業が伸びるチャンスです。一方で、失敗すると大きな損害が発生するリスクもあります。

ではどうすれば成功に繋げられるのでしょうか。M&A成功のポイントは「戦略」です。戦略とは簡単にいえば、目的達成のための準備や計画のことを指します。適切な戦略が立案できていれば、成功率が高まるでしょう。しかしどのような手順で戦略を立てれば良いか、疑問に思う方も多いと思います。

今回はM&Aを成功に導くための戦略立案の手順や、ポイントを解説します。M&Aを検討している経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

M&A戦略の策定が重要な理由【買い手】

文字通り、事業買収する側が「買い手」になります。買い手側にとって戦略を立てるのが重要な理由は、より高いシナジー効果を得るためです。M&Aでは多額の資金が動きます。曖昧な戦略で買収に失敗すると、大きな損失が発生することもあります。その結果、自社の経営悪化を招く事態になるかもしれません。

M&Aをする明確な目的、予算、買収候補選びなど、慎重に細かく戦略を立てることが大切です。M&Aにはさまざまな知識が求められます。綿密な戦略を立てるためには、M&Aアドバイザーなどのプロにサポートを依頼するのがおすすめです。

M&A戦略の策定が重要な理由【売り手】

売り手側も明確な戦略を立てる必要があります。なぜなら戦略が曖昧だと、交渉が場当たり的になってしまう可能性が高いからです。結果的にしっかりと戦略を立てた買い手側に上手く丸め込まれ、不利な条件で売却してしまうことにもなりかねません。

またとにかく早く譲渡したいという思いだけで動くと、予想以上に低い金額で譲渡することになる可能性もあります。希望の金額で事業を譲渡したいのであれば、なんなく良さそうな条件の譲渡先を探すのではなく、条件を明確にしましょう。

売却先の希望業種を絞り、自社事業の魅力を明確にするなど戦略を立てることで、高く譲渡できる可能性が上がるでしょう。

M&A戦略を立案する手順

M&A戦略を立案する手順

しっかりした戦略を立てることが、M&A成功の重要ポイントであることがお分かりいただけたと思います。しかしM&Aが初めてだと具体的にどのような戦略を立てていけばよいか、疑問に思う方も多いでしょう。

ここではM&A戦略を立案する手順を解説します。戦略を立てる方法はいくつかありますが、主な手順は次の通りです。

  1. 自社分析を進める
  2. M&Aの目的を明確にする
  3. 市場調査を行う
  4. 専門家のアドバイスを受ける
  5. 候補企業をリストアップする
  6. 相手企業へのアプローチ方法を決める

。戦略が曖昧だと失敗するリスクが高まります。それぞれ具体的に解説しますので時間をかけてじっくりと考えてみてください。

自社分析を進める

まずは自社の現状を知ることが大切です。そのためにも自社分析をしっかりしましょう。分析方法はさまざまですが、経営戦略や事業計画の現状分析をするための「SWOT(スウォット)分析」という方法があります。

  • S Strength=強み
  • W Weakness=弱み
  • O Opportunity=機会
  • T Threat=脅威

競合や市場などの外部環境と、自社資産やブランド力、品質などの内部環境をプラス面とマイナス面に分けて分析します。自社の経営環境をさまざまな視点から知ることで、課題が見えてくるでしょう。課題がわかれば、M&Aをする目的や目標も明確になります。

M&Aの目的を明確にする

自社分析できたら、M&Aをする目的を明確にしましょう。事業規模拡大はもちろん、新規事業参入、海外市場の開拓、機能の確保など目的は企業によってさまざまです。目的が曖昧だと、戦略がブレやすくなってしまいます。進めている最中になんのためのM&Aかわからなくなってしまうこともあるかもしれません。

成功のポイントとしては、「事業拡大したいから」「売りたいから」ではなく、より具体的な目的を立てることです。目的から外れたM&Aを実行すると、想定していたメリットが得られなかったり、予想以上の費用がかかったりすることもあるでしょう。

「アプリやゲームを作っているが、事業拡大を目指している。人気レストランや飲食店に特化したサイトを買収し、自社ノウハウとのシナジー効果を得たい」

「人材育成業を展開しているが、子供向け英会話スクール事業へ参入して事業拡大を目指したい」

「事業承継したかったが、身内から良い返事が得られなかった。従業員を守るため、利益を得るためにも信頼できる企業へ譲渡したい」

簡単な目的例ではありますが、このようにゴールをしっかりと定めることで、次にやるべきことが見えてきます。

市場調査を行う

M&Aをする目的が明確になったら、次に市場を調査します。市場調査とは、市場の現状や業界の動向を知るために情報を収集することです。M&Aの目的により調査範囲は異なります。例えば買収して事業拡大を目指したいのであれば、次のような項目で調査します。

  • ターゲット業界に将来性はあるか
  • 市場規模はどのくらいか
  • 参入障壁はあるか
  • 安定して利益が見込める業界か
  • 将来性はあるか
  • 競合はどのくらいいるか

これらを詳細に調査することで、どのような形でM&Aが可能か、どのような企業に売却、または企業を買収するべきか検討します。異業種など未知の業種は馴染みがない分、特にしっかりと市場調査することが大切です。

専門家のアドバイスを受ける

トラブルを避けてスムーズにM&Aを進めるならば、専門家への依頼は必須といえます。なぜならM&A成立までには多くの手順があり、知識がなければ難しい部分も多くあるからです。特に交渉となると、ある程度の知識と経験がなければ相手企業に丸め込まれ、不利な条件を飲まされてしまうこともあります。

初めてM&Aをする際には、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。依頼先は大きく分けて2つあります。一つはM&Aアドバイザリー、もう一つはM&A仲介企業です。

M&Aアドバイザリーは買い手または売り手のどちらか一方につき、ついた側の利益を優先してサポートします。自社の目的に合わせた戦略コンサルなども可能です。一方、M&A仲介企業は売り手と買い手の中間に立ち、双方が利益を得られるよう中立的な立場でサポートします。

大手M&A仲介企業には弁護士や公認会計士、税理士など法律や財務に詳しい専門家が在籍していることも多いです。法律に詳しい専門家がサポートにつけば、予期せぬトラブルや事案が発生したときも安心して任せられるでしょう。

どちらを選ぶかは利益だけではなく、自社の目的や利用メリットなどで総合的に判断する必要があります。

候補企業をリストアップする

前述までが決定したら、いよいよ候補企業のリストアップです。相手企業によって今後の事業展開や見込まれる利益が異なります。慎重に検討していきましょう。

まずロングリストと呼ばれるリストを作成します。リストアップする基準は目的によりますがシナジー効果が得られるか、事業拡大が見込めるかなどの条件で挙げていきます。20社から30社程度が一般的とされていますが、なかには100社以上リストアップする場合もあります。

ロングリストができたら、さらにそのなかから候補企業を絞り込んだショートリストを作成します。より詳しく調査を行ない基準となる項目を設定し、その項目に該当する企業をリストアップしましょう。最終的には5社~10社ほどに絞り込まれます。

相手企業へのアプローチ方法を決める

候補の企業が絞り込めたら、アプローチ方法を決めましょう。相手企業へのアプローチ方法は主に「直接アプローチする」「仲介・アドバイザリーを利用する」があります。

「M&A経験がある」「トップ同士が知り合い」などであれば、直接相手企業にアプローチするのもよいでしょう。スピーディに交渉を進められ、機密情報も当事者間だけにとどめられます。

一方、M&Aが初めてであれば仲介企業やアドバイザリーに依頼するのがよいでしょう。適切なアプローチ方法や、必要書類についてサポートを受けられます。また利益を得られるように交渉を進めてくれるので、自社だけでやるよりも目的を達成しやすいでしょう。

もし希望条件はあるけれど具体的な候補企業が決まっていない場合は、マッチングサービスの利用がおすすめです。M&Aマッチングサービスは、インターネット上でM&Aの相手を探せるサービスです。まず企業名がわからない範囲で情報登録、内容を見て興味が持てたらリクエストを送り、相手が応じればマッチング成立となります。

広い範囲で相手を探すことができ、リストアップにも活用可能です。気に入った相手が見つかれば、直接アプローチにも展開できるので、応用性の高いサービスといえるでしょう。このように方法はいろいろあります。より成功率を高めるためには、自社に合った方法で相手企業にアプローチしていくことが大切です。

M&A戦略を策定する際のポイント

M&A戦略を策定する際のポイント

M&Aを成功させるためには戦略が大切ですが、策定する際にはいくつかポイントがあります。ここでは戦略を立てるポイントを解説するので参考にしてください。

戦略に一貫性を持たせる

M&Aは成立したら成功ではありません。成立した結果「目的」を達成できて初めて成功となります。成立や譲渡はあくまでも「手段」です。ここを忘れないようにしましょう。M&Aは戦略策定から契約まで多くの時間がかかります。複雑なM&Aを進めていくなかで、手段がいつの間にか目的になってしまっては、希望する結果は得られないでしょう。

結果的に「成立」を後悔することになるかもしれません。そうならないためにも戦略に一貫性を持たせ、M&Aの過程で目的を再確認しながら進めていくことが大切です。最後まで本来の目的を見失わないようにしましょう。

長期的な見通しを持って戦略を立案する

見通しが甘くないかもしっかりと確認しましょう。自社分析がしっかりされており、明確な目的に基づいて戦略が立てられていれば、成功したも同然と思えるかもしれません。

しかし立てた戦略の見通しが甘いと、思わぬ失敗を招く可能性があります。

例えば買収側が目的に合いそうな、魅力的な企業に出会ったとしましょう。市場的にも可能性を持った企業なら大きな成功ができると確信し、アプローチした結果、成立したとします。

しかし調査が甘く重大な税務リスクを見逃していたとしたら、成功どころか大きな損失となってしまうでしょう。

大きな成功ばかりに気を取られずに、合理的根拠のある見通しを持ち、リスクにもしっかり目を向けた戦略を立てることが大切です。

情報流出に気をつける

M&Aは、基本的に契約が成立するまで外部には明かさないのが原則です。途中でM&Aを進めていることが漏れてしまった場合、取引先企業との関係悪化や、社内が混乱する可能性があります。誤った風評が広がることもあるかもしれません。その場合、今後の経営にも大きく影響を及ぼします。

それらを防ぐためにも、情報の扱いには細心の注意を払いましょう。秘密保持契約を締結する、M&Aに関わる人員を最小限にするなど対策をしっかりと取って進めることが大切です。

他社の買収事例を研究する

これまでM&Aはさまざまな業界や業種で行なわれています。どのような事例があるのかさまざまな事例を研究しておくとよいでしょう。同業のM&Aの事例を見れば、M&Aのイメージもつかみやすくなります。また異業種の事例を知ることで、新たなシナジー効果の可能性を思いつくかもしれません。

ポイントは成功事例だけではなく、失敗事例も研究することです。失敗事例を知ることで、どのような点に注意するべきかも見えてきます。より良い戦略を立てられるでしょう。

状況に合わせて戦略を変更するのも視野に入れよう

状況に合わせて戦略を変更するのも視野に入れよう

M&A戦略の重要性と手順を解説しました。M&A成功のポイントは、しっかりとした調査と明確な目標に基づいた戦略です。戦略が曖昧だと思ったような利益が得られなかったり、経営に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。

長期的な見通しを持ち、成立が目的とならないように注意しながら進めていきましょう。ただし相手あってのM&Aです。戦略どおりにいかないことも多々あります。戦略変更せざるを得ない場合もあるでしょう。そのようなケースも視野に入れ、柔軟に変更できる姿勢を持つことも大切です。

あらゆるケースやリスクを考えたうえで、M&A成功に向けて戦略を立案していきましょう。

この記事を書いた人

DX支援メディア編集長
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