事業承継トライアルとはどんな事業?利用する際のポイントも解説

事業承継トライアルとはどんな事業?利用する際のポイントも解説

事業承継には手間や費用がかかる

経営者にとって、最後の大仕事ともいうべき大事な作業が事業承継です。事業承継とは、経営を後継者に引き継ぐことをいいます。しかし現代の中小企業における事業承継は、後継者不足などの理由により深刻な状況です。後継者が見つからず、廃業を選択する経営者の方も多くいます。

また手間や費用もかかるため、つい後回しにしてしまいがちです。しかし事業承継は事業を存続するために、いつかやらなければならない作業です。そこで政府は事業承継を促進するために「事業承継・引継ぎ補助事業(事業承継トライアル)」を開始しました。

今回は事業承継・引継ぎ補助事業(事業承継トライアル)について詳しく解説します。労力や金銭的負担を減らしてスムーズな承継をしたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

事業承継・引継ぎ補助事業(事業承継トライアル)とは?

「事業承継・引継ぎ補助事業(事業承継トライアル)」とは、スムーズな事業承継の実現を目的とした支援制度です。事業承継に向けた準備や後継者育成の「型」の策定、ノウハウの蓄積を目的として作られました。

中小企業や小規模事業者が社外の第三者を後継者候補とした場合、一定の要件を満たすことで補助金を受けられます。2019度にも「事業承継トライアル実証事業」という名称で、同様の支援をしていました。いずれも中小企業庁が担当しています。

事業承継トライアルで実施する内容

事業承継トライアルで実施する内容

事業承継トライアルは申請すれば、すぐに補助金が交付されるわけではありません。まず申請書類を提出し、審査を受ける必要があります。次に審査を通過し、補助金の対象となった企業は以下を実施します。

・事業承継計画の立案
・後継者候補の選定
・後継者教育の実施
・PwCコンサルティング合同会社との情報共有

ただし1〜3はすべて取り組む必要はありません。また2022年1月現在で第三次まで実施されていますが、次回公募より内容が変更になる可能性もあります。詳しくは中小企業庁のサイトをご参照ください。

事業承継計画の立案

スムーズに事業承継を進められるように準備や課題、承継方法などを決めます。取引先の金融機関など外部機関と連携し、策定や改善を進めていきましょう。

事業承継計画を立てる際のポイントは、自社の状況を正確に把握することです。

「会社の資産はどのくらいなのか」「考えられるリスクは何か」などを把握することで、より適切な計画の策定ができるでしょう。

後継者候補の選定

事業承継計画が策定できたら、次に後継者候補を決めます。次章で詳しく解説しますが、事業承継トライアルの対象となる後継者候補は、親族以外の第三者です。外部機関と連携しながら最適な候補者を選定しましょう。選定できたら該当する候補者と労働契約を結びます。

後継者教育の実施

後継者候補を選定し労働契約を結んだら、今度は後継者教育を進めていきます。大切な事業を続けていくために、しっかりとノウハウや知識、経営に関する重要情報を伝えていかなければなりません。

また事業年度内に、執行管理団体が提供する後継者教育プログラムを受講する必要もあります。

PwCコンサルティング合同会社との情報共有

事業承継トライアルを受けるにあたり、一連の内容をPwCコンサルティング合同会社と共有する必要があります。PwCコンサルティング合同会社は、本事業の執行管理団体です。

事業承継計画の策定から後継者教育までの進捗状況、後継者や事業計画に関連する情報は定期的に報告・共有しましょう。報告・情報共有は月1回を想定しています。

二次公募ではPwCコンサルティング合同会社以外に、株式会社バトンズも別のスキームで実施していました。しかし第三次公募はPwCコンサルティング合同会社のみとなっています。

事業承継トライアルの対象企業

事業承継トライアルの対象企業

事業承継トライアルは、5年を目途に第三者への事業承継を計画している企業が対象です。他にも受けるためにはさまざまな要件を満たす必要があります。ここでは要件の一部を解説します。詳細は中小企業庁のサイトをご参照ください。

・日本国内に住んでおり、日本国内で事業を営んでいること
・中小企業基本法第2条第1項で定める、中小企業者の範囲と小規模事業者の定義を満たしていること
・補助対象者、またはその法人の役員が暴力団等の反社会的勢力でないこと経済産業省からの補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられている者ではないこと
・執行管理団体からの連絡や指示、問い合わせに対して速やかに反応できること
・社内のルールがしっかりと整備され、スムーズな事業実施が可能なこと
・法令順守上の問題を抱えていないこと

要件を満たしていれば、個人事業主の方も対象となります。ちなみに中小企業基本法第2条第1項で定める中小企業者の範囲と、小規模事業者の定義は以下のとおりです。

業種分類定義
製造業その他資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

出典:中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html)

事業承継トライアルで受けられる補助内容

事業承継トライアルで受けられる補助内容

事業承継トライアルでは、以下に該当する費用が補助金の対象となります。

・事業承継計画の策定支援を受ける際の経費補助
・後継者マッチングに伴う手数料等にかかる経費補助
・後継者候補への後継者教育にかかる経費補助

補助率は2/3以内とし、上限額は350万円です。原則、補助事業実施期間内に発注、支払を完了したものに限ります。対象となる具体的な経費の内容は次章で詳しく解説します。

事業承継トライアル補助金の対象となる経費

補助となる経費の具体的な項目は、以下を参考にしてください。

経費内容
謝金事業を行うため、専門家などに指導やアドバイスをした場合に支払う経費
旅費事業の遂行に必要な出張費および交通費
外注費必要な事業の一部を委託、外注した際に支払う経費
外部研修費・受験費事業の遂行に必要な研修や、資格試験の受験に必要な経費
会議費事業の遂行に必要な会議に係った経費(会場使用料や機材費、お茶代など)
資料購入費事業の遂行に必要な書籍や資料の購入費

また以下の経費は補助の対象とならないので注意しましょう。

・補助金交付決定前に発注、契約を実施したもの
・事業終了後に納品や検収を実施したもの
・収入印紙、振込手数料(代引き手数料含む)
・公租公課
・その他、執行管理団体が適切でないと判断した経費

事業承継トライアルを申請する際のポイント

余裕を持って事業承継の準備を進めよう

事業承継を受けるためには、いくつか注意しなければならないポイントがあります。ここでは申請する際のポイントを3つにまとめました。

・募集要項をよく確認する
・補助金が後払いされるのを意識する
・公募期間を意識して手続きを進める

それぞれ詳しく解説します。

募集要項をよく確認する

募集要項はよく確認しましょう。対象企業や応募資格は条件が細かいものもあります。確認するのは面倒かもしれませんが、要件を満たしていなければ受けられません。しっかりと確認しておくことが大切です。

中小企業庁のサイトに募集要項や詳しい要件が記載されている資料、申請書の書き方が掲載されています。わかりやすく丁寧に解説されているので、忘れずにチェックしておきましょう。

補助金が後払いされるのを意識する

事業承継トライアルで交付される補助金は「後払い」です。事前に受け取れるわけではありませんので注意しましょう。200万円の経費に対し50万円の補助金が出るからといって、150万だけ用意すれば良いというわけではありません。あらかじめ事業に必要な経費と同額の資金を準備しましょう。

また支出内容については厳しく審査されます。領収書を紛失した場合などは、交付を受けられない可能性もあるので注意してください。領収書や帳簿などの証拠書類はしっかりと管理しておきましょう。

公募期間を意識して手続きを進める

事業承継トライアルの公募期間は決まっています。この公募期間外の書類提出はいかなる理由があっても受付してもらえません。事前に公募期間を調べ、早めに手続きを進めるようにしましょう。

応募は補助金申請システム「jGrants」のみでの受付となります。利用するためには、GビズIDアカウントの取得などの事前準備が必要です。まだ取得していない場合は、今のうちに作っておくことをおすすめします。公募開始した際にスムーズに申請できるでしょう。

ちなみに前回の第三次事業承継トライアルの公募期間は、2021年11月22日17時まででした。第4次公募期間については2022年1月時点でまだ公表されていません。こまめにサイトをチェックしておくとよいでしょう。

余裕を持って事業承継の準備を進めよう

余裕を持って事業承継の準備を進めよう

事業承継トライアルの実施内容や認められる経費、ポイントを解説しました。事業承継トライアルは、第三者への事業承継を検討している企業を対象とした制度です。審査に通れば補助金を受けられるので、該当する経営者の方は活用してみてはいかがでしょうか。

受けるための要件は細かく、申請時に準備する書類もたくさんあります。申請が間に合わなかったとならないよう、開始されたら早めに申請準備をしましょう。

この記事を書いた人

DX支援メディア編集長
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大手の営業会社で1年以上働いた経験があるライターが、客観的な情報を踏まえた上で、BtoB営業に悩まれている方に寄り添ったコンテンツを発信していきます。

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