事業承継は相続も視野に入れる必要アリ!税金面での優遇制度も紹介

事業承継は相続も視野に入れる必要アリ!税金面での優遇制度も紹介

事業承継では税金の負担を考えることも大切

事業を長く継続させていくため、経営を後継者に引き継ぐことを事業承継と呼びます。自社株式などの企業資産や、経営ノウハウを引き継ぎますが、引き継いだ方法や額により税金が課せられます。やることが多く時間がかかるため、早めに対策を始めることが大切です。

資産を引き継ぐと聞くと、相続をイメージする方もいるかもしれませんが、事業承継と相続は別です。しかし事業承継のタイミングや承継する相手によっては、相続が密接に関わってきます。2つの違いをしっかりと理解しておくことで、適切な対策を立てられるでしょう。

今回は事業承継と相続の違いを解説します。相続発生によって事業承継する際に活用可能な優遇制度も紹介していますので、スムーズに進めたい方はぜひ最後までご覧ください。

まずは事業承継と相続の違いを知ろう

相続は亡くなった人(被相続人)の所有していた財産を、配偶者や親族に受け継ぐ制度です。事業承継は、これまで経営してきた事業を後継者に引き継ぐことをいいます。引き継ぐという点では似ていますが、以下の点で違いがあります。

・原因や発生時期の違い
・対象者の違い
・手続きの違い

それぞれ具体的に解説します。有効な対策を立てるためにも、2つを混同しないようにしましょう。

原因や発生時期の違い

「民法第228条 相続開始の原因」には「相続は、死亡によって開始する」とあります。つまり相続が始まる原因は人が亡くなったこと、そして発生時期は亡くなった瞬間です。対して事業承継にそのような決まりはありません。

事業承継を開始するタイミングは、経営者の意思で決められます。そのため経営者が亡くなった瞬間に、すぐ事業承継が開始されるわけではありません。経営者が生きているうちに贈与や売却という形で事業承継を進めるケースも多くあります。

対象者の違い

相続の場合、被相続人の財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。相続権を持てる人は決められており、その優先順位は法律で次のように定められています。

第1順位:子供、配偶者(直系卑属)
第2順位:親、祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹

上記を見てわかるように、相続の権利を持つ人は配偶者や子供など近しい親族です。法律で定められた相続権を持つ人を「法定相続人」と呼びます。ただし被相続人が遺言書を残していた場合は、法定相続人以外にも財産をわけることが可能です。

一方、事業承継にはそのようなルールはなく、経営者が選ぶことができます。そのため親族に承継するケースはもちろん、従業員に承継するケースなどさまざまです。最近では身近に後継者がいないと悩む経営者も多く、親族や社員以外の第三者にM&Aを活用して承継するケースも増えています。

手続きの違い

手続きにも違いがあります。相続する方法は主に遺言書や遺産分割協議です。遺言書がある場合は、記載されている通りに分割します。もし遺言書がない場合は、相続権を持つ人が遺産分割協議を行い、どのようにわけるかを決めます。

事業承継の場合、手続きの方法は相続以上にさまざまです。親族に承継するか、それ以外の人や企業に承継するかで方法が異なります。例えばM&Aを活用する場合は買収、合併、提携などの方法があります。どの方法で事業承継を進めるかは、会社の状況や経営者の希望などで決めます。

事業承継で相続税が課税される財産の種類

事業承継で相続税が課税される財産の種類

相続で財産を引き継いだ場合、その額に応じて相続税が課税されます。では相続によって事業承継することになった場合、どのような事業財産が相続税の対象となるのでしょうか。課税対象となる財産の種類には以下があります。

・自社株式
・金融資産(現金・預貯金など)
・不動産(土地・建物)
・会社への貸付金
・相続開始3年以内に贈与された財産

このなかで評価が高くなる傾向にあるのが、自社株式です。後継者が経営権を持つため、基本的には自社株式のすべてを後継者に引き継ぐ必要があります。

そのため相続人が複数いる場合、財産の種類と額によっては後継者の相続分が自社株のみとなってしまうケースもあります。ここで注意しなければならないのが、相続税は現金一括納付が原則ということです。

自社株式の評価が高ければ、それだけ多くの相続税が課せられます。そのため後継者に納税資金がないと、自社株を手放したり、会社からの借り入れに頼ったりしなければなりません。

しかしそうなってしまうと、将来の経営に支障が出るリスクがあります。つまり事業承継は、相続のことも視野に入れて対策を考える必要があるのです。

事業承継で活用できる税金面での優遇制度

事業承継で活用できる税金面での優遇制度

多額の相続税がネックで、事業承継が進まないと悩む経営者の方は多いです。しかし税金面の優遇制度をうまく活用することで、負担を抑えられる可能性があります。ここでは事業承継で活用できる2つの制度を解説します。

・相続時加算課税制度
・事業承継税制

どちらにもメリットとデメリットがあります。自社の状況に合わせて賢く活用しましょう。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子や孫へ生前贈与する際に利用できる制度です。利用すれば2,500万円までの特別控除を受けられ、2,500万円を超えるまでは何度でも控除できます。2,500万円を超えた分の財産には一律20%の贈与税が課せられます。

その後、相続が発生した際に、贈与した分と相続財産を合計して相続税を計算し、支払った贈与税を差し引いて相続税を支払います。

贈与の場合、基本は暦年課税です。暦年課税だと年間基礎控除が110万円までしかありません。110万円を超えた分は贈与税がかかります。しかし相続時精算課税制度を活用すれば、贈与税をかけずに多額の財産を一度に移行することが可能です。

相続時精算課税制度のメリット

最終的には贈与した額も相続税計算時に加算されるので、税金の先送りともいえるでしょう。しかし将来値上がりする財産を保有している場合は、活用することで税金の負担を抑えることが可能です。

なぜなら相続時精算課税制度を活用した場合、引き継いだ財産は相続時の評価ではなく、贈与時の評価で計算されるからです。例えば贈与時に1,000万円の価値だった財産があったとしましょう。その後、相続発生時には評価が1億円になったとします。

もし相続時に対象の財産を相続することになれば、1億円に対してかかる相続税を支払わなければなりません。しかし制度を活用して事前に贈与しておけば、評価が1億円になったとしても、贈与時の1,000万円の評価額で算出されます。

そのため事業承継で値上がりが予想される財産があれば、相続時精算課税制度を使うことにより節税が期待できます。

相続時精算課税制度のデメリット

2,500万円まで非課税で生前贈与できる相続時精算課税制度ですが、注意しなければならない点もいくつかあります。

まず一度制度を選択したら撤回ができないことです。相続時精算課税制度は届出を提出することで活用できますが、一度提出してしまうと撤回はできません。贈与者が亡くなるまで継続して適用されます。暦年贈与で適用される年間110万円の基礎控除も対象外となります。

次に、この制度がメリットとなるのは、財産の評価が上がる場合のみです。もし贈与時よりも評価が下がった場合は、負担が増えることになります。そのため活用するかどうかは慎重に検討しましょう。使うべきか判断に迷う場合は、専門家に相談するのがおすすめです。

事業承継税制の特例措置

多額の税金がネックで事業承継が進まない場合に、有効なのが事業承継税制です。後継者が相続や贈与で財産を引き継いだときに、支払うべき税金を猶予できる制度で、要件を満たし続ければ最終的には免除されます。

事業承継税制の制度(一般措置)自体は2009年に創設されましたが使い勝手が悪く、あまり活用されなかったようです。しかし税制改正により、2018年に事業承継税制の特例措置が新たに創設されました。これにより自社株承継時にかかる相続税や贈与税の負担をゼロとすることが可能になります。

事業承継税制のメリット

事業承継税制の特例の最大のメリットは、最終的に贈与税や相続税の負担が100%免除できることでしょう。これまで税金がネックで進められなかった経営者も、事業承継税制を活用することで解決できます。

また一般措置に比べて後継者や先代経営者に関する適用要件も緩和されているため、多くの企業が利用できるようになりました。

事業承継税制のデメリット

事業承継税制のデメリットは、手続きが煩雑なことです。一般措置に比べると緩和されましたが用意しなければならない書類は多く、申請書の項目内容も複雑です。

また一度申請して終わりというわけではありません。最終的に税金が免除されるためには、決められた期間ごとに書類を提出する必要があるのです。もし提出が遅れてしまった場合は、猶予されていた税金を全額支払う必要があります。

他にもいくつか取消事由があり、該当する場合は同様に全額支払わなければなりません。事業承継税制を安心して利用するためには、専門家のサポートが必要不可欠といえるでしょう。

事業承継で相続に関する相談ができる専門家の種類

事業承継で活用できる税金面での優遇制度

相続や事業承継は、それぞれ複雑な仕組みも多く、経営者が1人で進めるには困難といえるでしょう。優遇制度はありますが、使い方を間違えると負担が大きくなってしまう可能性もあります。

リスクを抑えてスムーズに進めるためにも、専門家にサポートを依頼しましょう。税理士や弁護士、司法書士など士業と呼ばれる職業の人であれば、税金面や法律面から有効な対策を提案してくれます。ただし専門家によって得意分野が異なるので、どのようなサポートが可能かあらかじめ確認することが大切です。

また最近では、事業承継を専門に扱う企業も増えています。専門企業であれば、トータル的にサポートを受けることが可能です。なかには士業と呼ばれる人が在籍している場合もあります。どこに相談して良いか判断に迷う場合、最初は事業承継サポートを専門とする企業に相談するのがよいでしょう。

事業承継での相続対策は早めの準備が大切

事業承継と相続について解説しました。事業承継と相続はそれぞれ別ですが、密接に関係しています。どちらもしっかり理解しておかなければ、適切な対策は取れません。

優遇制度は上手く活用すれば大きな節税効果が期待できますが、間違えると損する可能性もあります。失敗しないためにも専門家に依頼して適切なアドバイスを受けることが大切です。「対策がされておらず、税金が支払えない」など、後継者に負担をかけないためにも、早めに準備をはじめましょう。

この記事を書いた人

DX支援メディア編集長
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大手の営業会社で1年以上働いた経験があるライターが、客観的な情報を踏まえた上で、BtoB営業に悩まれている方に寄り添ったコンテンツを発信していきます。

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